2018 年 42 巻 1 号 p. 65-72
本研究の目的は,地理教育において重視されている地理的な見方・考え方を妨げる背景要因について検討することであった.特に,地形ではなく地名を基盤として事象を捉える構えと,地図同士ではなく文章に地図を関連付ける読解方略に着目した.地理に関する文章と地図を自由に構成させる課題を行い,前者については地名の地図を基盤として地図を構成しようとするか,後者については文章を中心として地図を配置しようとするかによって,参加者のもつ構えや方略を調べた.その結果,地形ではなく地名を基盤として事象を捉える者が多くおり,地図同士ではなくより文章に地図を関連付ける読解方略をとる者も多かった.また,参加者のうち地形を基盤として地図を構成した者は,地理的な見方・考え方のテスト成績が高かった.地形を基盤とした構えを背景にもっていないことが,地理的な見方・考え方を妨げる要因であることが示唆された.