2017 年 57 巻 1 号 p. 37-40
症例は46歳男性.5ヶ月前から性格変化や記銘力低下があり徐々に増悪し就業不能となった.頭部MRI T2強調像で両側内側側頭葉に異常高信号域を認め当初はウイルス性や自己免疫性の辺縁系脳炎を疑ったが,血清と髄液梅毒反応がともに陽性であったため神経梅毒と診断した.ベンジルペニシリンで治療し就業可能にまで回復した.辺縁系脳炎に類似した画像所見を示す神経梅毒の症例では,比較的若年発症,HIV陰性,亜急性経過の認知機能低下やてんかん発作の特徴を有するため,同様の臨床的特徴をもつ症例では積極的に神経梅毒を疑うべきである.さらに本症例は髄液の抗グルタミン酸受容体抗体が強陽性で,病態へ関与した可能性が疑われた.