日本薬理学雑誌
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特集:難治性疾患の治療に向けた基礎研究
難治性消化器疾患の治療と創薬―基礎研究のための疾患モデルと薬効評価の問題点―
和田 孝一郎臼田 春樹
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2017 年 150 巻 4 号 p. 183-187

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抄録

クローン病や潰瘍性大腸炎に代表される難治性の消化器疾患は,指定難病の対象になっており,より効果的な創薬と根本的な治療法の確立が望まれている.そのためには適切な疾患モデルを用いた基礎的研究と,新しい治療薬開発のための薬効評価は重要である.その一方でこれら難治性消化器疾患の根本的な発症原因は依然として明らかになっていない.しかしながら粘膜の炎症・びらん・潰瘍といった炎症性腸疾患の病態発症には,免疫系の異常が直接の原因であることは間違いない.そこで潰瘍性大腸炎やクローン病の基礎的研究や薬効評価には,免疫系の異常をもとにした「ヒト病態に類似した」疾患モデルであるDSS colitisなどの化学物質誘発性のモデルが汎用されている.これらのモデルは薬効評価や免疫系の異常などの基礎的研究には有用であるが,必ずしも「根本的な発症原因に基づいて作製された」疾患モデルとは言い難い面がある.確かにこれまでの疾患モデルを用いた基礎研究や薬効評価により効果的な治療薬が臨床応用されているのも事実である.しかしながら将来の難治性炎症性消化器疾患の完治に向けた治療法確立のためには「根本的な発症原因に基づいて作製され」,「極めてヒト病態に類似した」疾患モデルの作製がより重要になると考えられる.

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