日本公衆衛生雑誌
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研究ノート
千葉県における特定健康診査標準的質問表から得られる生活習慣とメタボリック症候群との関連性の検討
芦澤 英一片野 佐太郎原田 亜紀子柳堀 朗子小林 八重子佐藤 眞一江口 弘久
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2014 年 61 巻 4 号 p. 176-185

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抄録

目的 特定健診標準的質問項目のうち生活習慣に関する質問の回答と翌年の特定健診結果によるメタボリック症候群(MetS)罹患との関連性を検証した。
方法 千葉県内全54市町村国保から匿名化して提供を受けた平成20年度と21年度の特定健診連続受診者278,989人(男性111,524人,女性167,465人)の結果を用いた。標準的質問表のうち生活習慣に関する質問(10項目)は,運動「歩行速度が速い」,「運動習慣あり」,「身体活動あり」,食習慣「早食いである」,「夜食・間食あり」,「夕食後 2 時間以内に就寝」,「朝食抜き」,喫煙「習慣的な喫煙あり」,飲酒「毎日飲酒する」,睡眠「睡眠で休養十分」であり,平成20年度の回答で 2 値化し,「NO」に対する「YES」の年齢調整オッズ比を求めた。横断研究は,平成20年度に MetS 群(MetS 該当または予備群)と MetS 非該当群との間で,縦断研究は,平成20年度 MetS 非該当者で平成21年度 MetS 予備群または該当群になった者を MetS 罹患者と定義し,MetS 罹患者と平成21年度も引き続き MetS 非該当者との間で行った。また,MetS 判定を従属変数として多変量ロジスティック回帰分析を行った。
結果 横断研究と同様に縦断研究でも,男性は「歩行速度が速い」(OR:0.88, 95%CI:0.83–0.93),「身体活動あり」(0.85, 0.80–0.90)が予防因子,「早食いである」(1.49, 1.40–1.59),「夜食・間食あり」(1.15, 1.05–1.27),「夕食後 2 時間以内に就寝」(1.15, 1.08–1.23),「毎日飲酒する」(1.08, 1.02–1.14)が危険因子となった。女性では「歩行速度が速い」(0.74, 0.70–0.78),「身体活動あり」(0.92, 0.87–0.98),「毎日飲酒する」(0.80, 0.71–0.90)が予防因子,「早食いである」(1.48, 1.39–1.58),「夜食・間食あり」(1.15, 1.05–1.26),「夕食後 2 時間以内に就寝」(1.19, 1.10–1.29),「朝食抜き」(1.21, 1.07–1.36)が危険因子となった。横断研究のみ有意であった項目は,予防因子として,男性の「運動習慣あり」,「習慣的な喫煙あり」,女性の「運動習慣あり」が,危険因子としては,男性の「朝食抜き」,「睡眠で休養十分」,女性の「睡眠で休養十分」が該当した。
結論 標準的質問項目で把握される不適切な運動習慣や食習慣が MetS の罹患につながることを示した結果であり,本質問表の有用性が示された。

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© 2014 日本公衆衛生学会
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