Research Abstract |
1、目的:睡眠時無呼吸症候群にみられる睡眠中の一過性血圧上昇の発現機序として、換気停止の結果としての低O_2血症や高CO_2血症による交換神経の直接的刺激が重要視されてきた。我々は、脳波上の覚醒反応と血圧上昇及び筋交感神経の活動亢進が密接に関連していることを確認し、無呼吸に伴う血圧上昇の発現機序として、覚醒反応の部分現象としての交感神経活動の亢進がより重要であると考え、以下の検討を行った。 1、方法:未治療の睡眠時無呼吸症候群の患者7名を対象に、睡眠中の筋交感神経活動(MSNAと略す)をタングステン微小電極により腓骨神経から導出し、睡眠ポリグラフと指尖動脈血圧、心拍数、換気曲線等を同時記録し、データレコーダーに入力した。これをシグナルプロセッサで解析した後、統計処理を行った。 3、結果:解析はMSNAの記録状態が良好な4名で行った。対象の無呼吸指数は全て20以上であった。4名の対象の合計152回の無呼吸について検討した。無呼吸持続中には、血圧は徐々に下降する傾向を示し、MSNAの発火頻度は漸増した。呼吸再開直前の脳波上の覚醒反応に引き続きMSNAの巨大なバーストが生じ、血圧はその約4〜6秒後に最大値に達した。各無呼吸を無呼吸開始点及び呼吸再開点を基準点にして,収縮期及び拡張期血圧,beat to beat intebal,MSNA積分波形について,平均値とその標準誤差のbeat毎の変動を検討した。 MSNAは,各無呼吸のMSNAの面積の最大値を100として標準化し,その平均値を算出した。その結果、収縮期及び拡張期血圧の急激な上昇は,呼吸再開後に認められた。MSNAは,無呼吸の持続中には高い活動水準であるが,最大の活動は呼吸再開前後にみられた。以上より、無呼吸に伴う一過性の血圧上昇の発現機序として、覚醒反応の部分現象としての交換神経活動の亢進が深く関与してと考えられる。
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