研究概要 |
^<12>C(α,γ)^<16>O反応は、恒星のヘリウム燃焼期におけるエネルギー源および^<16>O以上の元素合成を支配する最も重要な天体核反応である。ところが、これまでに世界中のグループが求めた反応断面積の測定値には2〜3倍の食い違いがあり、天体核物理学上の重大な問題となっている。そこで我々東工大グループは、この反応断面積を正確に測定するため、以下の経過に従って本研究を進めた。 1)実験に適した^<12>C標的を選定するため、炭素(グラファイト)製のブロック、薄膜、凝集粉末に加速器からのビームを照射し、耐久性を調べた。この結果、ブロックが最も優れた強度を持ち、標的として適していることが判明した。 2)実際の測定の際には、炭素標的中の^<13>Cによる(α,γ)反応からの高エネルギー中性子が最も重大なバックグラウンドを発生することが予想されたため、^<13>C(d, n)^<14>N反応を用いて同程度のエネルギーを持つ中性子をより大量に発生させ、効果的な遮蔽方法を検討した。その結果、通常中性子の減速・遮蔽に用いられるポリエチレン、パラフィン等の水素含有物だけでは不十分で、鉛、タングステン、銅などの重元素による非弾性散乱で効率的に減速させる必要があることがわかった。 3)1),2)で得た知見を活かし、α粒子ビームとγ線測定用大型NaI検出器を用いて^<12>C(α,γ)^<16>O反応断面積の測定を試み、重心系エネルギー1.4MeVにおける暫定値として800pbという結果を得た。これにより、我々の実験方法および実験装置が、将来予定している精密測定において十分な能力を持っていることが確認された。 以上の成果をもとに、検出器、中性子遮蔽を最適化し、本測定をおこなう予定である。
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