研究領域 | 超秩序構造が創造する物性科学 |
研究課題/領域番号 |
20H05884
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研究種目 |
学術変革領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
学術変革領域研究区分(Ⅱ)
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研究機関 | 東北大学 (2021-2023) 岐阜大学 (2020) |
研究代表者 |
志賀 元紀 東北大学, 未踏スケールデータアナリティクスセンター, 教授 (20437263)
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研究分担者 |
松下 智裕 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (10373523)
大林 一平 岡山大学, AI・数理データサイエンスセンター, 教授 (30583455)
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研究期間 (年度) |
2020-11-19 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
98,670千円 (直接経費: 75,900千円、間接経費: 22,770千円)
2023年度: 22,490千円 (直接経費: 17,300千円、間接経費: 5,190千円)
2022年度: 19,110千円 (直接経費: 14,700千円、間接経費: 4,410千円)
2021年度: 14,560千円 (直接経費: 11,200千円、間接経費: 3,360千円)
2020年度: 26,130千円 (直接経費: 20,100千円、間接経費: 6,030千円)
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キーワード | マテリアルズ・インフォマティクス / 機械学習 / 原子像再生 / 位相的データ解析 / 材料情報学 |
研究開始時の研究の概要 |
超秩序構造を持つ材料の原子配列推定、構造秩序の記述法、物性予測法の開発を通じて、効率的な材料設計・合成に寄与する技術の確立を目指す。原子配列推定のために、原子分解能ホログラム等の計測データから機械学習に基づく高精度推定法を開発する。そして、原子配列から超秩序構造を記述する手法を幾何学の数理基盤技術に基づき開発する。また、物質の構造・物性・合成データを整備し、機械学習に基づく超秩序構造から物性の予測モデルの構築、物質設計や合成プロセスの効率化手法を開発する。
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研究実績の概要 |
手法班や理論班との密な連携によって、データ解析法の開発、開発法のコード整備、ソフトウェアの機能強化を行い、開発ソフトウェアを用いたデータ解析に取り組んだ。計測データ解析の課題において、手法班(計画班A02-1およびA02-2)から提供される超秩序構造を対象とする原子分解能ホログラフィー計測、また、電子線顕微鏡による計測のデータ解析法の開発に主に取り組んだ。前者の光電子ホログラフィーの測定はSPring-8のBL25SUの阻止電場型分析器(RFA)で行っているが、従来の測定プログラムはRFA装置自体の開発用であり、利用実験には向いていなかった。そこでPythonによる測定ブログラムを開発し、ソフトウエアプラットフォーム3D-AIR-IMAGEと接続できるようにした。これにより大幅な測定時間の短縮と効率化され、共同実験者が利用形にした。電子顕微鏡計測のデータ解析においては、電子顕微鏡のSTEM計測に基づく構造秩序の解析を検討した。 超秩序の記述法の課題では、分担者の大林らが中心に開発しているパーシステントホモロジー解析ソフトウェアHomCloudの機能強化を行うとともに、パーシステントホモロジーの材料科学への応用に関する英文のレビュー論文、パーシステントホモロジーと非負行列分解を組み合わせた3次元X線CT画像の解析、アモルファスシリコンの原子配置と熱伝導率の関係をパーシステントホモロジー、機械学習、計算科学を組み合わせて解明する取り組みを行った。また、化学結合からなるネットワークに含まれるリングを中心とする解析を引き続き取り組んだ。今年度は、リング形状および空間相関に関する手法を提案する論文をとりまとめた。さらに、原子間距離、化学結合、空隙などの構造秩序を解析するGUIソフトウェアを本研究費雇用の研究者が中心となって開発し、他班の研究者が構造秩序解析をするための基盤を整備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計測班A02-1、A02-2、公募班との共同研究で測定したデータの処理を、開発したソフトウエアで処理をおこなった。複数の成果が輩出され、例えは、ダイヤモンドの界面の欠陥の原子配列の決定 [Nano Lett., 23, 1189]、GaNのドーパントの原子配列 [ACS Appl. Electron. Mater., 4, 4719]、Al203/GaNの界面構造の解明 [Appl. Phys. Express, 15, 085501] などの成果を得ることができた。電子顕微鏡を用いた解析においては,手法班(計画班A02-1)の研究者らとの共同研究によって,STEM計測に基づく構造秩序解析を検討し,電子線を用いる解析と,X線あるいは中性子線を用いる解析の特性の違いをまとめた [AIP Adv. 12, 095219]。 構造秩序の記述に関する研究において、上述の解析結果を論文にまとめるとともに、アモルファスの原子配置に対する機械学習ポテンシャルを、パーシステントホモロジーを特徴量として実現する研究などに新たに取り組んだ。本研究費で雇用している研究者を中心に、パーシステントホモロジー解析の新しい手法である「連結PD」の理論研究とソフトウェア開発を進めた。化学結合リングに基づく解析においては、提案法を用いて、アモルファスシリカと多様な結晶シリカの構造秩序を定量的に解析した成果を論文に取りまとめて投稿した。 超秩序超構造科学に関する英文専門書を執筆し、原子分解能ホログラフィーの章、パーシステントホモロジーおよび化学結合リングに関する章、また、機械学習に関する章を担当し、基礎概念、材料科学への応用、また、開発しているHomCloudの材料科学データへの応用などを解説し、取り組みを幅広い研究者に広めるための活動を行った。
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今後の研究の推進方策 |
原子分解能ホログラフィー計測データの解析において、共同研究者と連携しながらプラットフォームの改良を進める。例えば、光電子ホログラム測定プログラムの改良、蛍光X線ホログラフィーのノーマルモード測定による高解像度ホログラムのデータ処理などを対象に改良を進める。また、多量のデータが蓄積されつつあので、将来の公開を見据えて、光電子ホログラムの蓄積されたデータについて、データクレンジングを行い、データベース化を進める。電子顕微鏡による構造秩序の解析において、手法班(計画班A02-1)らの研究者らとともに電子回折図形イメージングに対する統計解析法などに取り組む予定である。2022年度はHomCloudの開発が停滞していたため、今後ソフトウェア開発に力を入れたい。連結PDについてはソフトウェアのさらなる高速化、また、試料班や計画班の研究者と連携することによってインパクトのある応用事例の探索、ソフトウェアの紹介論文の執筆、といった方針で進める予定である。パーシステントホモロジーによる機械学習ポテンシャルの研究は今後も継続していく。連携研究として、ガラスを延伸したときのミクロ構造の変化をパーシステントホモロジーで調べる研究などが今後進められそうである。試料班が中心となって取り組んでいる超秩序ライブラリーに収録される構造モデルの構造秩序を網羅的に解析及び可視化できるようなGUIソフトウェアを開発し、既存のデータ解析や新規に合成された材料の構造解析に取り組む予定である。
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