2017 年 57 巻 3 号 p. 245-259
本研究では, 批判的思考のうち「合理的な思考」と「反省的な思考」に着目し, 小学校理科授業において, これらを育成する指導法を考案し, 実践を通してその効果を検証することを目的とした。この目的を達成するため, 自分の考えをトゥールミン・モデル(主張-根拠・事実-論拠)に沿って記述させ, それに対する多様な質問経験(①他者の質問を見たり他者の考えに質問したりする, ②他者から質問され答える, ③自分の考えに質問する)を行わせた後, 再度自分の考えをモデルに沿って記述させるという指導法を考案した。そして, 小学校6年生35名を対象に種子の発芽に必要な空気の成分を問う課題を設定し, 授業を行い, 質問紙とワークシートによる分析結果をもとに効果検証を行った。その結果, 考案した指導法は, 他者の考えに「なぜだろう」と疑問をもち質問したり, 根拠を重視してより多くの情報や知識を求め合理的に思考したり, 自分の考えを反省的に思考したりする力の育成に寄与したことが明らかとなった。