癌・病態におけるThioredoxin,Txnip,ARRDC3研究の最近の展開

書誌事項

タイトル別名
  • Recent advances regarding role of thioredoxin,Txnip, and ARRDC 3 in cancer and other diseases
  • ガン ・ ビョウタイ ニ オケル Thioredoxin, Txnip, ARRDC3 ケンキュウ ノ サイキン ノ テンカイ

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抄録

<p> 酸素シグナルにおいて反応性に富むチオール基SH が修飾を受けることが一連の生体応答の重要なトリガーになっている。チオール基は酸化のターゲットになり,その強さによって可逆的/不可逆的な修飾を受ける。チオール基SH がSSH やSSSH となるポリスルフィド化が近年大きな話題となっている。チオレドキシン(thioredoxin ; TRX,TRN)は,過剰な酸化ストレスにより形成された基質蛋白のジスルフィド結合S-S 結合を切断することができる数少ない重要な酵素であり,ポリスルフィドを切断しうることも報告されている。認知症ではチオールSH 基の関与する異常蛋白質の凝集が問題となる。アルツハイマー病患者髄液中におけるチオレドキシンのtruncated form のレベルの低下が報告されており,神経変性疾患などの病態においてチオレドキシンに注目した研究が改めて必要であると思われる。一方,Thioredoxin binding protein-2(TBP-2)/thioredoxin interacting protein (Txnip)は,アルファアレスチンファミリーに属し,絶食応答,糖脂質代謝調節,癌抑制,免疫炎症制御など多彩な機能を持つ。特に,インスリン分泌,インスリン感受性,膵臓β 細胞のアポトーシスを調節し,糖尿病の病態に関与する重要な分子である。我々が報告したアルファアレスチンファミリーの別の分子arrestin domain containing 3(ARRDC 3)は,ベータアレスチンと共にアドレナリン受容体のシグナルを調節する重要な分子であり,さらに,乳癌でその発現が低下しており,また,遺伝子上流の一塩基多型が早期発症の乳癌の予後に影響を与える因子として報告されるなど発癌の制御に重要な分子として注目されつつある。</p>

収録刊行物

  • 天理医療大学紀要

    天理医療大学紀要 6 (1), 14-26, 2018-03-31

    学校法人天理よろづ相談所学園 天理医療大学

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