研究課題/領域番号 |
20K22482
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0402:ナノマイクロ科学、応用物理物性、応用物理工学およびその関連分野
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
加藤 邦彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70882299)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 遷移金属酸化物 / 酸化タングステン / ナノカーボン / マイクロ波 / 表面界面 / 光触媒 / 酸化チタン / ナノ粒子 / グラフェン / 界面 / 外場誘起反応 / 有機-無機界面 / 表面構造 / 複合粒子 |
研究開始時の研究の概要 |
任意の化学反応が表面で進行する光触媒のような高機能材料において、物質最表面の化学構造制御は極めて重要である。 本研究では、外場誘起により有機-無機材料界面で生じる協奏的反応を利用することで、これまで独立して達成されてきた「結晶性ナノカーボン被膜」および「セラミックス粒子 ナノ表面改質」の2つの反応工程を同時に達成できる反応現象を世界に先駆けて解明することを目指す。 本研究で得られる知見は複合材料における原子スケールでの高度な表面構造構築による高機能化を達成するうえで普遍的なものであり、工業的に合成が容易で消費エネルギーの少ない新たな生産方法の展開が期待される。
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研究実績の概要 |
2.45 GHzマイクロ波電場印加により金属酸化物-有機高分子表面界面で誘起する協奏反応において、反応速度に影響を及ぼす可能性の高い因子(反応温度、原料混合比)を変化させ、合成物質構造へ与える効果を調査した。、また、Tiと異なる電気陰性度を有する遷移金属種の酸化物である酸化タングステン (WO3) 及び酸化モリブデン (MoO3) を原料粉体として選定した。本合成では、高いマイクロ波選択加熱性を得るため、炭素源として比較的高い誘電正接を持つポリメタクリル酸メチル(PMMA)を用いている。PMMAを酸化物に混合することでマイクロ波印加により速やかに温度上昇が見られ、400℃以上では高分子熱分解が激しく進むことでガス発生が顕著となり、青緑色プラズマ発光が観察された。以上から、CO2及び揮発性炭化水素系化合物を含む分子生成が示唆された。(合成実験はAr雰囲気で実施。Arプラズマ発光色は赤紫。) TiO2系と同様、バルク結晶構造に変化を与えることなくカーボンとの複合化に成功した。また、PMMA混合比を増加させることでカーボンの結晶性が変化した。さらに、PMMA混合比が高い条件下では、酸化物のバルク内欠陥に起因する強いESRシグナルが確認され、複合化後にキャパシタンス増加及び1桁オーダーのインピーダンス減少が見られることが電気化学測定により明らかとなった。メチルオレンジの光分解反応において、可視光照射下では不活性な酸化物種であっても、複合粒子は2桁以上高い光触媒反応速度を示した。また、酸化物:PMMA体積混合比が2:1となる場合に活性は極大となり、混合比がそれ以上高くなると活性が低下する傾向にあった。複合構造形成による電荷分離促進が活性向上に寄与する一方、過剰量の炭素源存在によるバルク内欠陥増加により再結合中心として働く点や、カーボンシェル厚増加により酸化物の光吸収が阻害される点が活性低下の要因の1つとなると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の核となる「マイクロ波反応場によるセラミックス-有機高分子界面で誘起される協奏的反応」であるが、申請書に記載した金属酸化物-有機高分子の混合粉末に直接マイクロ波を印加するだけでなく、雰囲気制御により発生するマイクロ波プラズマによっても同様に引き起こされる可能性があることが新たに判明した。研究目的を達成するためには重要な調査であると判断し実施したため、複合粒子の合成・解析に時間が割かれ計画に多少の遅れがあるものの、複合的な視点からとらえることができるため反応メカニズムのより良い理解につながると考える。
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今後の研究の推進方策 |
マイクロ波により誘起されるセラミックス-有機高分子界面での反応系に共通して、有機高分子の高速熱分解、金属酸化物の表面改質、ナノカーボンシェル成長を経て複合構造が形成されることが想定される。協奏的反応における反応速度に大きく影響を与えると考えられる原料の性状、例えば、高分子(PMMA) の分子量や結晶性、金属酸化物粒子の化学結合性(イオン・共有結合性)やファセット結晶性を変化させることにより、生成するガス種及び最終的に得られる複合粒子の構造を比較調査する。具体的には、高分子の凍結粉砕による非晶質化、電気陰性度の異なる遷移金属を含む酸化物の選定、フッ素イオン存在下での水熱反応による合成酸化チタン粒子のファセット結晶制御(下記文献で報告した手法を基に作製:K. Kato et al., J. Ceram. Soc. Jpn. 129 (2021) 691.)等に取り組む。さらに、異なる条件下において有機高分子の熱分解に伴い生成する揮発性ガスを採取し、ガスクロマトグラフにより分析する。以上をもとに特異反応場においてセラミックス-有機高分子界面で生じる協奏的反応メカニズムについて明らかにするとともに、得られた材料プロセッシングの設計指針をもとに可視光・近赤外応答型光触媒の高機能化に取り組む。
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